『文明論之概略』の読み方(その2)

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「本位」という言葉は「興味本位」くらいしか遣われない言葉であると思っていた。

Googleで検索してみると、

「人物本位」「自分本位」「本位音」「本位記号」「本位貨」とあって、「本位貨幣」の種類により「金本位制」「銀本位制」が出てきて、「本位金貨」となる。やっと「興味本位」がでてきて、「熟語本位主義」や「他人本位」など見慣れない熟語もある。

関連キーワードには、

「自分本位」「利用者本位」「相手本位」「ラーメン本位」「目的本位」などがある。

「本位」が基準として「本位を定めること」の重要性を説くことは福沢諭吉の『文明論之概略』に何度もでてくる。

第1章のタイトルは「議論の本位を定る事」である。

丸山真男は「議論の本位を定めざれば、その利害得失を談ず可からず。」を解釈するにあたって、「議論するには、まずその立場をはっきりさせなければいけない。いったいお前は守る立場から言っているのか、それとも攻める立場から言っているのか。でないと得だ損だといくら言ってみたところで、不毛な議論になってしまう。利害得失を言う場合、立場によって話が逆になってしまうわけです。」と言っている。「本位」を議論の立場と解釈している。

子安宣邦氏は「議論」そのものをある立場からの主張や論説とし、「議論の本位を定める」ことについて、「議論とは、それが本来のべようとすること、すなわち「本位」を明らかにした論でなければならないということと、現在もっとも緊切な議論とは何を「本位」とした議論であるべきかということの両方の意味をもっている。」としている。

したがって、丸山真男が『文明論之概略』がなぜ「議論の本位を定る事」から始まるかをとらえ損ねていると批判した。

「文明論」とは「文明」を本位とした議論である。福沢はここで「文明」を本位とした議論の重要性、そして文明社会における議論(公論)の必要性こそ訴えているのである」とした。もっともだと思う。

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