山折哲雄『にっぽん巡礼 漂泊の思いやまず』創元社、2010年
コロナで旅に出られなくなって、本を読むことでこころの旅に出ることにした。普段はそれすら忘れて仕事のテーマを追っているのである。これは体力もいるし、ストレスにもなるのだろう。本を片付けていて見つけた本を気晴らしに読むのは久しぶりの休暇のようで嬉しくなる。
前に読んだ時の記憶が甦ってきた。京都駅6番線からの旅を書いたまえがきを読むことで十分だった。新宮と倉吉への旅行は、崖登りのスリルが味わえたのである。著者がどんなに苦労したとしても、その経験を同じくすることはできない。むしろ、昔の記憶のほうが、勝手に甦ってきて、宙に乗り出す感じや、石が跳ね落ちていくときのきな臭い匂いまでするのである(谷川岳一ノ倉沢)。
そんな旅をした山折氏が住む鉾町の話は元日の朝に町内の肝煎りと揃って外で柏手を打って拝礼する話から始まる。
水平線に沈む夕陽を眺めるのは月並みというわけで、都会の夕陽を眺めようという話で終わる。これなら私にもできるかもしれない。そういえば夕焼け京都塾は東山の正法寺からの西山の眺めだった。季節ごとに違った夕焼けを見たであろう相方が羨ましくなった。
注)夕焼け京都塾は新しい体制で再開されるという。
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