平川祐弘『ダンテ『神曲』講義 上』河出文庫、2023年
「本書は日本の教養ある読書人のためのダンテ『神曲』講義録である」(p.15)。
『ダンテ『神曲』講義』河出書房新社、2010年を文庫本にするに当たり二分冊にした。上巻は12回の講義が収録されている。
平川祐弘氏は比較文化史の大家であるので、単行本が出た時に読みたかったのではあるが、その大きさで躊躇した。考えてみれば、子安宣邦先生の市民講座もテキストが後に本になっていったのを何度も見てきたのであるから、もっと早く手にしていてもよかった。
いつものように最初の講義である、第1回 ダンテ『新生』を読んだところで、メモをしている。知的スタミナからいっても講義1回分は90分であるので、それ以上読み続けても注意力が落ちるのでやめておく。
平川祐弘氏の文学的センスを感じる。本当のところダンテ『神曲』のどこが今の日本人にささるのだろうか。
「私見では今日の日本でダンテを取りあげる際に一体なにが大切か、という選択こそが私たちにとっては肝要なのであり、その日本人読者なり日本人学生なりが置かれている立場と講義する自己自身が置かれている立場についての文化史的な自己吟味が不可欠なのではあるまいか」(p14)。
キリスト教イデオローグとしてのダンテではなく、詩人としてのダンテを読むことになるのだろうか。第1回はダンテの詩集である『新生』からいくつかの詩を見てきた。vita nova という詩を母語であるトスカーナ方言で書いたダンテやペトラルカそしてボッカッチョによって標準語なったという(p.68)。私としては明治日本を扱った『和魂洋才の系譜』の著者であるから、私の関心に近いのではないかと期待が持っている。
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