『批評の教室』(2021)その2

Goinkyodo通信 読書時間

北村紗衣『批評の教室ーーチョウのように読み、ハチのように書く』ちくま新書、2021年

第2章 分析する

冒頭の批評理論については、深入りしない。
・ポストコロニアル批評
・フェミニスト批評
・クィア批評
これらについては、詳細な読書案内がある。

1.分析方法のヒントがいくつか提示され、ビジュアルである。

(1)タイムライン
「これがとくに効力を発揮するのは、やたら短いタイムスパンの作品、やたら長いタイムスパンの作品、時系列が直線的でない作品です」(86頁)。

『夏の夜の夢』タイムライン(同上)
『ロミオとジュリエット』タイムライン(88頁)
『ミドルマーチ』年表(91頁)
『ドクター・フー』「暖炉の少女」タイムライン(95頁)

(2)人物相関図
『嵐が丘』人物相関図(99頁)

(3)図
「ソネット45番」のイメージ(102頁)
『アントニーとクレオパトラ』の棒人間マンガ(北村画)(103頁)

(4)抽象化
「世界各地の民話を類型ごとに分類した」(106頁)ものを紹介して、その一部を載せている。

ATUインデックス500-510(109頁)

(5)モチーフ早見表
タランティーノ監督作品のモチーフ早見表(113頁)

2.分析した後に待っているのは、価値づけである。
北村紗衣氏は価値づけすることに積極的である。

「私は価値づけ、つまり作品の位置づけや質がどういうものなのかを判断する作業というのは批評のなかでも楽しいプロセスだと思っています。何か作品にふれたとき、面白かったとか面白くなかったとかいう感想が生じます。なぜ面白かったのか、どういうところが面白くなかったのかを考え、その根拠を明らかにして他の人と共有するのが私にとっての重要な価値づけプロセスです。作品自体がちっとも面白くなくても、この価値づけのプロセスが面白ければ、作品から楽しみをもぎ取ることができます」(115頁)。

芸術の価値評価についても議論があって、「成功価値」と「受容価値」はちらを重視するかではなく、両方考えなければならないとしているが、自分がやりたいと思うほうで批評すればよいとしている(117頁)。

価値づけに使える戦略

(1)要素に分解する方法
抽象化のこと

(2)ネットワーキング
「作品を他の作品との関連性で位置づける」(123頁)

「間テクスト性」(同上)を読み取ることで、作品同士の何らかの関係性を見出すことを「友達」(同上)探しに例えている。

『TENET テネット』ネットワーク図(北村、飯島)(127頁)

数多くの作品に触れなければ、これらの手法も使えないのは言うまでもない。

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