土井善晴『一汁一菜でよいという提案』新潮文庫、2021年第3刷
書誌情報
2016年にグラフィック社から刊行されたものを文庫化した。写真は土井善晴氏のものでありカラーであった。養老孟司氏が解説を書いていた。
料理研究家の土井善晴氏は、軽妙な喋りでテレビの料理番組でも見かけたことがある。「食文化」について、「一汁一菜」という提案は料理をしない私にも響くものがある。グラフィック社版を探したが、見つからなかった。文庫版がでたので手に入れようと思ったら、入院することになったので、今頃買ったら、もう3刷になっていた。
不思議なタイトルである。提案と言っておきながら、何かはにかんでいるように遠慮がちな体言止めである。料理のレシピ本ではない。和食と生活を見つめ直した本である。2013年に和食がユネスコの無形文化遺産となった。著者はその理由を挙げて、「これはまさに、日本の国民の健康と暮らしの情緒に関わる家庭料理のことだと」(120ページ)いう。
一、素材の持ち味を尊重する(旬を楽しむ)
一、栄養バランスに優れた健康的な食生活(動物性油脂をあまり使わない)
一、暮らしの行事とともにある(節句のちかし寿司やおせち料理)
一、自然の移ろいを表現する(美しいプレゼンテーション)
3ページ程度の養老孟司氏の解説を読むと、「一汁一菜が修身の第一歩である」(224ページ、2021年9月、解剖学者)と終わっている。やはり、食事から心身を整えるのが一番なのである。
「一汁一菜の未来 ーー文庫化にあたって」を読むと、「一汁一菜」について多くの人々との対話を通じて深められた思想であることがわかる。
「料理は哲学です」(217ページ)。
橋本麻里氏の新聞記事など転載するのはサービス精神が溢れすぎてネタバレである。
最後に、石川九楊先生の書があるのが、文庫版の良いところである。
和食の感性(120-131ページ)では、料理との関係で視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚が述べられていて、今の私のテーマそのものである。このことについては月末の「2021年12月の購入図書」でまた触れることになるだろう。ヒントはどこにでもある。
#心身,#五感,#料理
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