プラトン、藤沢令夫訳『パイドロス』岩波文庫、1967年、2016年第63刷
『パイドロス』とはパイドロスという青年とソクラテスとのアテナイの郊外の泉の辺にあるプラタナスの木陰での夏の日の対話である。プラトンはソクラテスに「ディアレクティケー」を実践させてみせた。
パイドロスが弁論術家のリュシアスの書いた作品をソクラテスに読んで聴かせる。テーマは「恋」(エロース)であるが、「一人の男が美少年に言い寄るのに、ひとは「自分を恋している者よりも恋していない者にこそむしろ身をまかせるべきである」と主張」(P242 解説)するパラドクシカルなものであった。これに対し、ソクラテスはこのテーマをもっと上手に扱えるとして物語をパイドロスに聴かせる。そして、エロースに対する冒瀆の恐れから、エロースを賛美する主張で反対の結論を導いてみせる。
このパラドクシカルな物語のなかで、ソクラテスはエロースというある種の狂気や魂の不死を語った。
「弁論術」への批判がテーマであるが、「恋を主題として宇宙的規模において展開される、人間の魂の遍歴の物語なのである」(P245)と解説で藤沢令夫は上手に要約している。
「「弁論術」の技術の基本的条件として要請される、真実の追求」(P252)は「ディアレクティケー」によってこそ達成させる。
そして最後に、ものを書くことの意義と限界が論じられる部分(P161以下、省略)まで来たとき、前田英樹氏の『愛読の方法』(2018年)で引用されたフレーズが出てきた。
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