『古代の朱』(2005)その2

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松田壽男『古代の朱』ちくま学芸文庫、2005年、2017年第2刷

古代朱砂産地の露頭は点在的であり、露頭部を取り尽くすと竪坑になる。当時は排水技術が無いため、地下水位に達すれば竪坑は廃止される。

丹生氏は『新撰姓氏録』の載る古代の名族である。丹生氏は朱砂を求めて全国へ移住した。古代の安房国を例に説明している。安房国に丹生川がある。平久里川があって平群郡が置かれていた。奈良からの入植がその他の地名に残っている。松田氏は地名に丹生の名前が残っているものを45箇所あげている。松田氏は先に和歌山の高野山系の丹生神社を除いて丹生神社を47数えている。ただし、重複があり総数は46である。これら土地の試料の水銀の含有量を調査している。

丹生氏の植民で水銀の女神(ニウズヒメ)が祀られていた。しかし、水銀が採取できなくなると、別の土地へ向かう。その間に、水の女神(ミズハノメ)となって水分(みくまり)という水の配分を掌る神となったり、中国的な雨師であるオカミ祭祀に変わっているところもあるという。祀りこんだ水がね姫がどういう神なのか、わからなくなって、「淫祠」という悪名を掲げられて捨てられた丹生神社が岡山県に2例ある。神捨場があったという。大多羅寄宮趾だ。

松田氏によると、ニウズヒメを祀る丹生神社が減るのは、水銀の産出が忘れ去られたことによる。天武天皇による神武天皇を顕彰した丹生川上神社はニウズヒメからミズハノメへ変身したという。高野山系の丹生神社は高野明神と丹生明神のセットで祀られた。

私が見たのは丹生都比売神社であった。祭神は丹生都比売大神、高野御子大神、大食津比売大神、市杵島比売大神の4柱である。

『丹生都比売神社史』(2009)を読んだときは、丹生氏の理解が十分でなかった。松田氏の本を読んだので、丹生川上神社と丹生都比売神社の関係がすっきりした。

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2017-06-22『丹生都比売神社史』(2009)

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