『延喜式』が身近になる

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虎尾俊哉『延喜式』(吉川弘文館、1964年、2012年新装版第5刷)

本書は「『延喜式』についての、正確な基礎的な専門知識を平易なかたちで提供しょうとする」意図で書かれたものである。

『延喜式』の「式」は「「律(りつ)」「令(りょう)」「格(きゃく)のような他の法典とは区別され、しかもこれらの法典とともに一連の体系的な法典群を形作っている特定の法典を指す言葉なのである」(1頁)。

『延喜式』は五十巻、約三千三百条がほとんど完全な形で残っている貴重な史料である。

『延喜式』以前の諸司式を概観したのち、『延喜式』の編纂目的が『弘仁式』と変更部分の『貞観式』の併用の不便さの解消にあったとする(58頁)。

延喜五年(905)に左大臣藤原時平に対して編纂の詔命が下った。時代は律令政治の最後の段階であり、班田収受法の実施は延喜二年〜三年を最後として史上から姿を消したという(56頁)。

『延喜式』の施行がその奏進後なぜ直ちに施行されなかったか。

「延長五年(927)に奏進された『延喜式』は、その後ただちには施行されず、四十年後の康保四年(967)に至ってようやく施行された」(80頁)。

現行法で政治が回っているから、施行は喫緊の課題ではないということか。

『延喜式』は神祇官関係の式、太政官関係の式、それ以外の諸司の式、雑式となっている。令外官である「蔵人」と「検非違使」の式がないことに注意したい。

ただし、説明については、追記(247頁)で訂正されている。「内匠寮」と「勘解由使」も令外官であるが、准令制官職であるため、『延喜式』に「内匠式」や「勘解由式」が存する。「蔵人」や「検非違使」は官位相当もなく宣旨職ともよぶべきものであるから令外官の性格の相違で説明する必要があったとする。

あとは『延喜式』の内容について著者の記述方針を引用して終えることにする。

「各式ごとに、その官司の職掌を中心として一般的な解説を簡単に述べるとともに、私の力の及ぶ範囲で、重要な規定や興味のある条文を取り上げて解説することにしたい。また、それらの式が今日において、どういう分野でどういう価値を持っているかということは特に重要であるから、この点にはできるだけ言及することにしょう」(93頁)。

参考文献、テキスト解説及び追記(本文の訂正箇所や問題点など、批判に対する私見、最終2003年)も有用な情報である。もちろん索引も完備されている。

本書は古代史研究者のための本であって、一般読書人にとっては過ぎたるものであろう。

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