孤心ナクシテ

読書時間

大岡玲氏がユリイカの『大岡信の世界』で「孤心ナクシテうたげナシ」を寄せていた。大岡信の『うたげと孤心 《大和歌篇》』(集英社、1978年)に書かれた父の為書には「玲君 孤心ナクシテ うたげ ナシ 信」とあった。

浪人生への励ましと受け取ったようだ。

私は宴で披露するためには、一人ひとりが準備する必要があると考えている。孤独な営為があって宴は成り立つ。「うたげ」における「合わせ」とは一回限りの行為だ。その重みを受け止めて孤独な心を研ぎ澄ます。

中村稔氏が「故旧哀傷・大岡信」(『大岡信の世界』)の中で、「いったい、この『うたげと孤心』は名著にちがいないのだが、「うたげ」には充分な説明が尽くされていても、「孤心」については説得力をもつ説明が記されていないという憾みを禁じることができない」と言っている点が面白い。「うたげ」の場に孤心に発した作が出ていないと言っているのだ。難癖をつけているのかと思ったが、テーマの捉え方が違うのだった。

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