行動変容

断片記憶

「行動変容」がテーマであった。

話を聴いて(行動が)変わらなければ意味がない。

鎌田實氏の講演で聴いた言葉だ。「行動変容」は相手に影響を及ぼすことだという。「行動変容」を起こす言葉こそがコミュニケーションだと。

鎌田實氏はいきなり自身の出生の話をし始めた。出生後に両親は離婚し、1歳半で貰われた。つまり、父親に捨てられたという。育ての親は小学校を出ただけの父親と心臓病を患う母親だった。

寂しい子供時代を過ごしたエピソードを披露してくれた(このエピソードは本に書いてある。)おばさんの家にテレビを見させてもらいに行く話だった。おばさんの家で食事を始めるという空気を感じると、礼儀正しくお礼をいい、またテレビを見させてもらうことを請うのだった。

捨てられた子は環境に敏感になるのであろう。気丈に振る舞っていたという。しかし、家に帰っても両親は不在で寂しいだけだある。ある時、その寂しさを顔に出してしまった。同情したおばさんに夕食を一緒に食べるように言われた。どんなに嬉しかったことか。

5回に1回は夕食が出るようになると、鎌田實少年は努力を開始する。食事をほめることで5回に1回が3回になったりする(笑)。

日本でテレビ放送が始まったのは1953年なので、1948年生まれの鎌田實氏はテレビ第一世代に当たる。テレビがある家に入り込んでテレビを見た経験を持つ人は、1960年を過ぎてもいたし、1964年の東京オリンピックがテレビの普及の画期となった。

次のエピソードは、別の本に書いてあるのだろう、『1%の力』では簡略に扱ってあるだけであった。貧乏な家庭なので大学へ行きたいと思っても父親は許してくれない。ある時、勉強したいと父親にいうと、父親に「(貧乏人は)勉強しなくていい」と言われ、カッとなった鎌田實氏は、父親の首を手で締めていた。人の心はまだらであるとも、人の心に鬼が済むともいう。

二人で泣いたあとで、父親が自由にしてよいと言ってくれた。そして鎌田實氏は自立する。

今日のテーマは「1%の力」であるが、出生から育ての親に手をかける話になったのは人間の心の問題から「行動変容」への長いプロローグだった。

プロローグはまだ続く。大学を出て医者となった鎌田實氏は、赤字で倒産しそうな長野県茅野市の病院へ行く。それも現地を見ずに決めたという。無鉄砲だったという。内科医として、長野県の脳卒中の日本一というありがたくない記録の改善に取り組むことになった。

やっと、「行動変容」の話に戻ってきた。生活習慣を見直し日本一の健康県になると、鎌田實先生の回診に大勢の若い医者が付いてくる。ドクター鎌田が末期癌の患者に何をいうのか、見守っているのだった。

その後のお話は本に書いてある話なので『1%の力』(2014)を買って読んでもらいたい。印税はイスラム国の侵攻で足を奪われた子供たちを救う「希望の足プロジェクト」に寄付されるという。

鎌田實『1%の力』河出文庫、2016年

2014年に河出書房新社で単行本で出したものを文庫化したもの

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