髙橋昌明『定本酒呑童子の誕生 もうひとつの日本文化』岩波現代文庫、2020年
書誌情報
『酒呑童子の誕生ーーもうひとつの日本文化』は1992年に中公新書、2005年に中公文庫となった。中公文庫版に「〈補説3〉描かれたモノノケ」「【付録2】鬼と天狗」を加えて岩波現代文庫とした。
解説は永井路子氏「東京新聞1992年9月13日」。
新書で出発したため、文庫になって索引がついて論文集らしくなった。
髙橋昌明氏の格調高い文章を読んでいくと、こんな文章を書きたいと思ったりする。私には一行も書けない。推敲を重ねて言葉を選ぶにも、深い学識に支えられているので、的確な言葉が出てくる。メモを取ったり、章立てを構想したりして、全体構造が見えなければ書けない文章である。
あてどなく綴るだけの私のやり方では百年経っても書けない。だから、メモと割り切って書いておこうと思う。
「当時の鬼についての正確な理解が要求される」(P3)。
「そもそも「鬼」という外国の文字(漢字)に翻訳された日本語には、オニとモノとがあり、かなりのちまで鬼はモノ、鬼気はモノノケと読まれた」(P3)。
「鬼はまずもって疫神と把握されねばならない」(P3)。
この第一章が岩波から出た論文であることはあとがきに書いてある。論文をまとめて他社から新書を出したが、最後に岩波現代文庫に収まるとは不思議な縁だと思う。
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