阿部公彦『理想のリスニング 「人間的モヤモヤ」を聞きとる英語の世界』東京大学出版会、2020年
何で語学の本を買うのでしょうか。受験するわけでもないのに。洋書を読んでいてモヤモヤ感があるので、誤訳の定番にハマっていないか調べるためです。それは3割くらいの理由で、本当はこれだという本に巡り会えていないからです。自分が読めていないところを意識して読むくらいしか今のところ対策はありません。日本語であっても理解できない文章は多いですから尚更です。
この一年は英文解釈の本を読んできました。理解が深まるのは気持ちがよいです。阿部公彦氏は気になっていましたが、近くの本屋には置いてありません。ところが、『理想のリスニング』は置いてありましたので、『徒然草をよみなおす』(小川剛生、ちくまプリマー新書、2020年)のついでに購入しました。
本書はリスニングに関して理論編と技術編からなります。
著者は英語学習でいう「四技能」をバランスよく習得するという考え方に疑問を投げ掛けます。
1.「読む」「書く」「聞く」「話す」の「満遍のない習得」が中等教育(中学・高校)の段階で可能かが疑わしい。
2.「四つ均等」にこだわるのがほんとうに合理的なのか。
四技能のうち「聞く」は受動的であることでその特殊性に着目して、「聞く」という「受動の技術」を鍛錬することが必要といいます。
言語の心地よさが「よどみなさ」にあるとして「話す」ことにばかり着目してきましたが、
目標を「よどみなさ」の価値がわかる聞き手になることとしたことがポイントです。
音声教材はwebで公開されています。自動再生ができないので、CDをMP3に変換してスマホで聴くとよいでしよう。音声教材は一部分のため、webで完全なものを聞く、ないし見るためのURLがあり、「理想のリスニング | 音声サイト」は充実しています。
松本道弘氏の『一息英語』(たちばな出版、2003年)シリーズ以来のリスニング教本でした。このシリーズは1秒編、2秒編、3秒編と英語を聴き取る訓練でした。聞く訓練は自分なりの訓練方法を工夫するのが求められるのだろうと思います。
聞くためのコレクションを持つことから始めたいと思いました。
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