加藤陽子『天皇の歴史8 昭和天皇と戦争の世紀』講談社学術文庫、2018年第4刷
昭和を読む意味
この時期に、昭和を読むことの意味を考えさせられます。戦争と平和の時代であった昭和を我々は忘れ始めているのではないのでしょうか。そもそもちゃんと振り返っていないのではないのでしょうか。
将来に向かって過去を見詰めると、つい最近まで男女差別がありました。大陸への膨張政策が国策として議論されていた昭和天皇の時代は、それほど前の時代ではありません。
自分の生きた時代に起きたことを振り返るとその種は過去に撒かれていたことが分かります。
昭和天皇の生きた戦争の世紀を振り返るため、500頁もある文庫版を読むのはなかなか大変でペースが上がりません。年表は試験と違い暗記する必要はありませんが、頭に入っていないとどうにもならないのも確かです。それにしても「事件」ってなんでしょうかね。
満洲事変(1931年)
第一次上海事変(1932年)
五・一五事件(1932年)
二・二六事件(1936年)
盧溝橋事件(1937年)
ノモンハン事件(1939年)
「あとがき」と「はじめに」を読んで、全体の見通しを付けたわけですが、序章以下は読物としての歴史が昭和天皇に即して語られます。一次資料に基づいた研究に裏打されており、安心して読めます。
序章では、三度び焦土に立ち、上皇より「不本意な歴史であったのではないか」と察せられた昭和天皇の体験を再現し、東アジアを中心に国際情勢が概観されます。
三度の焦土に立つとは、第一次世界大戦の激戦地、英軍奮闘の地イープル(ベルギー)、フランスのヴェルダン、ソンムを皇太子時代に視察したこと、関東大震災、そして東京空襲被災地を視察したことです。
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