『仏典をよむ』(2009)

読書時間

末木文美士『仏典をよむ 死からはじまる仏教史』新潮社、2009年第2刷

黙って、鎌田東二『南方熊楠と宮沢賢治 日本的スピリチュアリティの系譜』(平凡社新書、2020年)を読み飛ばせばよいのに、熊楠の密教と賢治の法華経のことが気になって寄り道することにしました。

末木文美士(すえき ふみひこ)氏の『仏典をよむ』は第一部 死からはじまる仏教で経典を論じています。第二部 日本化する仏教は主として宗祖の著作であって経ではありません。この本は「本覚思想」を道元のところで論じています。本来は天台のところで論じて欲しかったのですが、小著では無理な話です。『南方熊楠と宮沢賢治』を読むウォーミングアップにはちょうどよいと思ったのでした。大角修氏の『日本仏教の基本経典』(角川選書、2020年)も気になりましたが、大角修氏をよく知らないので今回の選択とはなりませんでした。

長く生きていると法華経についても何度か本を読む機会がありましたのである程度理解しているつもりになっています。「しかし、表面のことばだけ見ればおよそナンセンスで信じがたい物語が、どこか心に引っかかって、落ち着かなくさせる。恐らく、理性で統御できない深層の何かと共鳴するのであろう」(P59)と末木氏が書くのを読むと、末木氏が大乗経典に向ける分かり難さの感じを私も共有した気になります。

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