大木毅『「砂漠の」ロンメル』角川新書、2019年
あとがきで大木毅氏が呉座勇一氏の『陰謀の日本中世史』(角川新書、2018年)を取り上げていた。最近は読まなくなったが、ミリタリー本の中にはいい加減な本もあって、呉座勇一氏が提示した原理は陰謀論の見分けるのに役に立っている。大木毅氏が「今日、ここまではわかっているという研究の現状を提示する」(P300)という意図はありがたく、この本を読むことに決めた。
読み終えて、感想としては、ロンメルは師団長としては適格だが、軍,軍集団司令官としてはふさわしくなかったことが再確認された。勇猛果敢で戦術的センスのあるロンメルが活躍するところは面白いが、作戦的・戦略的な面で失敗するロンメルを見ていると残念で、「結局のところ、ロンメルは大戦略を理解するだけの資質もなければ、そのための教育も受けていなかった」(P295)という著者の主張を受け入れざるを得ない。
陸軍大学を出ていない傍流のロンメルは、「総統アドルフ・ヒトラーの愛顧を受けて、思いもがけぬ高みに昇った。けれども、ギリシャ神話は、神に対する傲慢は神の憤りを招くと説く。ロンメルもまた、自らを引き上げてくれた神、すなわちヒトラーに滅びを命じられたのであった」(同上)。
デイヴィッド・アーヴィング『狐の足跡 ロンメル将軍の実像』(早川書房、1984年)などの歪曲に対する批判は分かるが、史料状況に基づく結論の留保ということを理解するだけの知識が私にないことが分かった。
#ロンメル #大木毅 #砂漠の狐
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