『和辻哲郎』(2009)

読書時間

熊野純彦『和辻哲郎』岩波新書、2009年

何度も目にした森有正の文章から始まっている。

「ひとつの生涯の本質的なありようは、その生命の稚いない日々のうちで、すでにあますところなくとあらわれているものなのではないだろうか」(『バビロンの流れのほとりにて』)。

和辻哲郎は1889年に兵庫県神崎郡砥堀村仁豊野(現姫路市)という農村に代々の医者の家の子として生まれ、1960年に北鎌倉松岡山東慶寺に永眠した。仁豊農(にぶの)は姫路を流れる市川を北に遡ったところだ。姫路駅から播但線を8.2キロで仁豊農駅がある。明治の農村の様子を知るよしもないが、晩年の和辻哲郎は『自叙伝の試み』を絶筆としたが、熊野純彦氏は「和辻は、その幼年期の記憶に対してあまりに多大な紙幅を割いている」という。東京へ出て第一高等学校(旧制高等学校)で終わった自伝は3年をかけて中央公論に掲載されたから、稚年期の記憶がほとんどだという。

コメント

タイトルとURLをコピーしました