今井むつみ『英語独習法』岩波新書、2020年
第1章 認知のしくみから学習法を見直そう
第2章 「知っている」と「使える」は別
第3章 氷山の水面下の知識
第4章 日本語と英語のスキーマのズレ
(第5章以下はその2)
今井むつみ氏は認知科学の専門家で、以前、『学びとは何か』(2016年)が面白かったので、読むことにした。英語については、飽きやすい私ができる学習法はないので、学習法の本だけ読んできた歴史がある。自分のスキーマに働きかける今井むつみ氏の説明は説得力がある。間違ったスキーマは直されないまま定着していたのだろう。この状態を読めども残らずという。自分のスキーマにかからない情報はスキーマを更新することなく記憶されない。
なお、スキーマは「認知心理学の鍵概念で、一言でいえば、ある事柄についての枠組みとなる知識である」(p.27)。この27ページ以下で復習できる。
単語の意味を固定して認識してしまうことが、外国語の学習を難しくする。母語のスキーマが外国語の習得に影響することを意識しなければ、変な外国語は直らない。日本語のロジックで外国語を書いても外国人の書く外国語と違ったものになる。英語を母語とする人の発想が様態動詞+前置詞になるのと日本人が動詞+副詞句ないし擬態語になりやすい傾向の指摘は面白い。
その意味で本書では触れていないが、最所フミ編著『英語類義語活用辞典』(ちくま学芸文庫)のように近い言葉の遣い分けを理解するなかで、スキーマを更新するアプローチは肯定されよう。語彙は常に更新されねばならない。
以前翻訳の本を読んだときに、言葉の意味を特定していくアプローチは新鮮だった。曖昧な情報について注意深く扱うことはもっと意識してよかった。
少し逸れてしまった自分のアプローチを見直して、スキーマの更新がちゃんとできるようにして、正しく読むという自分の目標に少しでも近づきたい。
#語学 #英語
コメント
[…] 注)2021-01-05『英語独習法』(2020) https://handbook-of-four-cities.com/entry/2021/01/05/060000-2394 […]