『近代史における国家理性の理念』国家を見極める思想

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『近代史における国家理性の理念』国家を見極める思想

谷沢永一、渡部昇一、山崎正和、林健太郎、高坂正堯、山本七平『古典の愉しみ』PHP研究所、1983年

林健太郎とは誰か

『古典の愉しみ』の林健太郎の「『近代史における国家理性の理念』国家を見極める思想」を読んで青春が甘酸っぱさとともに蘇ってきた。林健太郎はドイツ近代史家であった。若い頃はマルクス主義者であったが、戦後にマルクス主義を批判し後に東大総長となり、参議院議員ともなった。

マイネッケとは誰か

林健太郎は『古典の愉しみ』でマイネッケをあげていた。マイネッケといっても一般には知られてないドイツの歴史家である(と思っている)。ドイツの実証的歴史学の元祖のランケの弟子でプロイセン学派のジーベルの弟子がマイネッケだという。『古典の愉しみ』ではマイネッケの『近代史における国家理性の理念』(岸田達也訳『世界の名著54 マイネッケ』中央公論社、1969年)を二番目の代表作として紹介している。「国家理性」という学術用語をマイネッケは「国家行動の基本原則、国家の運動法則である」という。林健太郎は「国家の自己維持の行動原理」という。マキャベリやフリードリヒ大王から「国家理性」を説いていく。そして、林健太郎がマイネッケが第二次世界大戦直後に出した『ドイツの悲劇』(矢田俊隆訳)を『世界の名著54 マイネッケ』に入れた理由を「ナチスの台頭から政権をとるまでの過程を自分の体験に則して事実に忠実に述べていますが、そこに理論的な考察も現れていて大へんおもしろい本」だからと言っている。

マイネッケと私

さて、マイネッケである。私も大学で政治思想史を学ぶなかでマイネッケも読んだのであるが、もうすっかり忘れている。実業界の生活が毎年本を買い替えることで知識を常に現在のものにしてきたのに対し、大学で学んだことは当時の知識のままであるか、むしろ後退している。

そこで『世界の名著54 マイネッケ』(中央公論社、1969年)を読むことにした。予定外の読書である。課題図書もあるので読書生活は破綻してしまうかも知れない。それでも、まあいいかということで、漫然とページをめくることにした。まず、高坂正堯と林健太郎の対談を読むのだった。

注)『世界の名著 54 マイネッケ』は重いので、事務所と研究所に一冊づつ置いてある。

注)『世界の名著 54 マイネッケ』の『近代史における国家理性の理念』は完訳ではない。抄訳だったので、ある時、みすず書房の『近代史における国家理性の理念』(菊盛英夫・生松敬三訳、1976年)を手に入れたのだが、どこかの段ボールに入ったままになっている。

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