『漢文入門』(2015)

読書時間

前野直彬『漢文入門』ちくま学芸文庫、2015年

日本語らしいとはどういうことか?

この『漢文入門』は漢文を読むための基礎を提供するものである。

では、漢文とはどういうものか?

「漢文」の定義は「中国の古典的な文を、中国語を使わずに、直接日本語として読んだ場合、その文に対してつけられた名称である」(018)。

「漢文」に広い意味と狭い意味がある。広い意味とは韻文・散文の双方を含めたものであり、狭い意味とは「漢詩」に対して散文だけをいう場合である」(019)。ここでは広く解釈する。

訓読は日本語である。とすれば、何故そう読むのか? ないしは、何故他の読み方ではダメなのかを考えることで、日本語の輪郭が浮かんでくる。

3 訓読の方法で、漢音・呉音・唐宋音を復習し、送りがなや返り点を解説したあとの4.訓読の歴史が興味深い。

中国語の読み方を習うために、奈良朝の人々の工夫が訓点の始まりであり、カナの成立につながる。ヲコト点などの約束事は専門化し秘事となっていく、いろいろな返り点法が使われたのを眺めてきて、訓読が今のような統一をみたのは明治45年3月29日の文部省による「漢文教授に関する文部省調査報告」以降であることが了解される。

著者はむすびで、訓読法について注意をしている。

第1 訓読は便利な方法ではあるが原文の解釈として完全とはいえない。

第2 われわれは訓読の歴史上の一点にたっているにすぎず、全歴史を包含した訓読法を確立しているわけではない。

第3 漢文訓読法は中国の古典を対象とするところから出発しているので、中国の現代文を読むためのものではない。

本書は203頁であるが、示唆に富んだ内容だった。

コメント

タイトルとURLをコピーしました