永瀬嘉平『かくれ滝を旅する』世界文化社、1991年
何やら聞いたことこあるような題名である。白州正子が腰帯に寄せた言葉「瀧、聞いただけで、心おどるものがある。」をみて『かくれ里』(1971年)であることを思い出した。
本書は「四半世紀も滝に憑かれている」という著者の滝見行である。15回の滝見行と「滝と日本人」というエッセイからなる。付録には「日本の滝百選」もある。永瀬嘉平氏は選考委員でもあった。
『かくれ里』は車で移動なのだが、「かくれ滝」は車で行けるところも歩いて行かないと気が済まない。滝壺に浸かるまでして、滝=神との一体化を求める。滝を私ししまわないと気が済まない。なので、「かくれ滝」となる。
私は、「かくれ滝」は一つも見たことがない。しかし、『かくれ里』が想念のなかにしかないのと同じく、「かくれ滝」も発見され、観光地として白粉されて、見るも無残なものとなるという著者の無念さを思いやることはできるのだった。
さて、第1章 五色の滝・北精進ヶ滝という章題を見てふーんといえる読者はさすがである。ドンドコ沢にかかる五色ヶ滝の手前にある白糸の滝や南精進ヶ滝はどうしたのかという疑問がでて当然である。確かに、日本の滝百選には北精進ヶ滝が入ったが、ここは滝めぐりの場所である。読んでいけば分かるのだが、永瀬嘉平氏がフイルムを交換した場所に忘れてきたという失態をやらかして本に載せられなくなってしまったのであった。
もっとも、青木鉱泉から地蔵岳のルートに「かくれ滝」などありはしない。ルートから外れた北精進ヶ滝へ向かわなければ、本にはならない。
『かくれ里』の隣に本書を並べてしばらく楽しもうと思う。
注)日本の滝百選は1990年選定された。
本書が出てから四半世紀が経とうとしている。
第1章 五色の滝・北精進ヶ滝
第2章 ピナイサーラの滝
第3章 インクラの滝
第4章 常布の滝
第5章 早戸大滝
第6章 天滝
第7章 笹の滝・不動七重の滝
第8章 安の滝
第9章 赤岩の滝
第10章 御来光の滝
第11章 不動大滝
第12章 “飛竜”賀老の滝
第13章 風折の滝・高滝
第14章 米子大瀑布
第15章 千尋の滝
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