『シンプルな英語』(2021)

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中山裕木子『シンプルな英語』講談社現代新書、2021年

書誌情報
302頁あるが、重要な点は青色で示されており、暗記すべき文がわかり易い。

田中健一氏が英語の学習書をTwitterで推薦していたので購入することにした。田中健一氏は『伝わる英語表現法』を復刊させた予備校講師である。著書もよく考えられた本であったし、推薦図書は買って間違いがなかった。

特許翻訳の専門家である中山裕木子氏は『会話もメールも英語は3語で伝わります』(ダイヤモンド社、2016年)、『英語は3語で伝わります【どんどん話せる練習英文100】』(ダイヤモンド社、2018年)などの本がある。これらのタイトルは際物のようなネーミングであるが、出版社はビジネス書専門の出版社である。普通は選択しないが、田中健一氏を信用することにした。一応、kindle版もあるのでサンプルを見てみたが、「はじめに」しかなくて例文が確認できなかった。

シンプルな英語の定義

中山裕木子氏は英語と日本語の違いに着目し、「英語力の土台とは、「主語と動詞を決める力」です。本書では「組み立て」と呼んでいます」(3頁)という。

これは、長部三郎氏の『伝わる英語表現法』(岩波新書、2001年)と同じ発想であり、佐々木高政の本とも通じる。中山裕木子氏は技術翻訳に通じているので、例文がシンプルでカレントである。

シンプルな英語の定義という節の題名はあるが、明示的に定義はしていない。どうやら、日本人の英語とネイティブの英語の重なる部分にシンプルな英語を求めている。

20頁の図からシンプルな英語の例を抜き出してみる。

他動詞を活用
自動詞を活用
助動詞で動詞を補助
短く区切った英語

英語の文型についてもシンプルな英語のヒントがある。

基本5文型の内SV、SVC、SVOが工業技術英語で多用される(24頁)。

3語で伝わる英語とはSVOのことのようだ。

シンプルな英語を支える指針を5つ上げている。
1 具体的な主語から文を開始する
2 力強い動詞を使う
3 受け身を減らす
4 シンプルな単文で表す
5 否定のnot文を減らす

シンプルな英語のイメージがつかめた。

世界に伝わる日本人の英語を目指そう

中山裕木子氏は日本人の英語学習者がぶつかる英語の「壁」を克服することを考えている。

目指す英語が間違っていたのではないか。流暢な英語を話すことを目指してなかったか。

「目指す英語を「非ネイティブによる、世界の非ネイティブにも伝わる英語」と定めます」(299頁)。

「焦らずに会話を続けるためには、英語と日本語が違うことを理解し、日本語から直訳しそうになる頭の働きを抑えて日本語を意識的に切り離す。そして英語の主語と動詞を取り出す練習を積んでおくこと。複雑な表現をできるだけ抑えてシンプルに組み立てる」(300頁)。

佐々木高政の本で主語の選び方、動詞の定め方の訓練をしてきたのは間違いではなかった。あとは2章から8章までの例文は読んだだけでは身に付かないので使えるようにする必要がある。著者の言葉を使えば「組み立て」を繰り返すことしかない。言語習得は地味なスキーマ構築にある。

注)
著者のTEDxKyotoUniversity講演を観てみた。
“Simple English for Eveyone” Yukiko Nakayama
https://youtu.be/24Tzq9sdTas

Tipsを2つ挙げていた。
Use Verbs!
Use The Active Voice

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