皆川博子『辺境図書館』講談社、2017年
0. 書誌情報
『辺境図書館』は講談社「IN☆POCKET」2014年10月号〜2016年10月号に連載したもの25篇に、書き下ろし「水族図書館」を加え、索引を付けたものです。連載は2017年4月号から再開されています。
1. 『辺境図書館』とは
小説家の皆川博子氏が読んだ本を紹介するエッセーであるとしておきます。閉架式の辺境図書館には皆川博子氏が蒐集してきた名作・稀覯本が収められています。
2. 「辺境図書館」開設のきっかけとは?
辺境図書館の開設は「025 『郡虎彦全集』と郡虎彦 『郡虎彦 その夢と生涯』と杉山正樹」の中で語られています。「辺境図書館の開設は、マンディアルグの一篇がきっかけ」だといいます。皆川博子氏はマンディアルグの短編「ポムレー路地」をもとに『クロコダイル路地』を書いたと言っています。しかし、ここでは郡虎彦(こおり とらひこ)の話が中心で、その後の展開はありませんでした。辺境図書館開設のきっかけの詳細は語られていないのです。何故に「辺境」なのか。
3. 『ポムレー路地』を入手する
江東区森下にある古書ドリスが『辺境図書館』の特集をしていたので、行ってマンディアルグ著、生田耕作訳(奥書には生田耕作著とある)『ポムレー路地』(奢灞都館、1988年)を手に入れました。『辺境図書館』には手持ちの本をなくしてしまったので(まさか特装版100部のこと?)、編集担当のT氏にAmazonで短編が載っている『黒い美術館』(白水社、1985年)を取り寄せてもらったと書いてあります。奢灞都館版は舞台であるナントのポムレー路地の写真が入っています。サバト館とは読めませんよね。これって生田耕作のイメージが入っているのではないのか? 生田耕作の署名もあるので、大切にしておきたい本です。
4. 謎は深まるばかり
マンディアルグの『ポムレー路地』という幻想譚を読み終えて、閉架式の辺境図書館の開設の謎が深まるのでした。命名者はT編集担当としてしか分かりません。
金の月が素敵です。
ポムレー路地
伊豫田晃一氏の蔵書票のコピーをもらいました。
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