『チョコレートの世界史』(2010)

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武田尚子『チョコレートの世界史 近代ヨーロッパが磨き上げた褐色の宝石』中公新書、2010年、2020年11版
川北稔氏の『砂糖の世界史』(岩波ジュニア新書、1996年)は砂糖を通して世界システムを論じていた。こうした観点では、角山栄氏の『茶の世界史』(中公新書、1980年)は緑茶の文化から紅茶社会が論じられている。さて、『チョコレートの世界史』は大西洋三角貿易に言及はしているが、主体は工業技術と都市労働者の労働環境の問題である。
カカオの加工プロセスを見てみる(p.10)。
収穫したカカオ豆を発酵させ種子を取り出し乾燥させる。
カカオ豆を砕いて、皮を取り除くとカカオニブができる、カカオニブを炒ってから、磨り潰すとカカオマスができる。
カカオマスをプレスすると、ココアケーキとココアバターに分離される。
カカオマスは脂肪成分が約55%も含まれている。脂肪成分であるココアバターを取り除いたココアケーキを砕いて粒子にしたものが、ココアパウダーである。
カカオマスに、ココアバター、砂糖、ミルクを混ぜて、精錬(コンチェ)し、調温(テンパリング)したものを冷却・成形して固形のチョコレートができる。
カカオ豆はココアとして飲料とすることから始まった。固形のチョコレートの誕生が1847年にブリストルであるという(p.83)。飲むココアから食べるチョコレートになったのはそんなに昔でもない。
カカオマスをプレス機にかけて、脂肪分を搾り出し、ココアバターを取り出す技術は、1828年にオランダのヴァン・ホーテンが編み出していた」(p.85)。
これに対して、「ジョーゼフ・フライのアイデアは、(省略)、搾油していないカカオマスに、ココアバターをさらに加えるというものだった」(同上)。
画期的なアイデアである。
「日本の規格ではカカオ分が35%以上で、そのなかにココアバターが18%以上含まれている製品を指す」(p.12)。
そうだったのか。ダークチョコレートの70%の意味は「カカオマス+ココアバター」の総量(同上)だった。脂肪分控えめの私はダークチョコレートだからよいと考えていたが、ココアバターという脂肪分18%以上含有されてなければチョコレートととは言えないのだった。
注)
「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」を見ると、なかなかに複雑である。
チョコレート生地とは「カカオ分が全重量の35%以上(ココアバターが全重量の18%以上)であって、(以下省略)」。
「チョコレートとはチョコレート生地のみのもの及びチョコレート生地が全重量の60%以上のチョコレート加工品をいう」。

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