『文化が違えば、心も違う? 文化心理学の冒険』(2025)その3

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北山忍『文化が違えば、心も違う? 文化心理学の冒険』岩波新書、2025年

第2章 日米の常識を疑う

「文化の研究は、必然的に研究者自身をとりま文化が出発点になる」(p.36)。

著者は静岡県焼津の漁師町で幼少期を過ごし、進学校である藤枝東高校から京都大学文学部へ進んでいる。そこで「実験心理学」から「社会心理学」へ興味をシフトさせている。

「なぜ心理学者で引用されるのは欧米人ばかりなのか」(p.39)という疑問に突き当たったという。

そこで、ミシガン大学へ留学することになるが、著者はカルチャーショックを受ける。「アメリカといえば、個人主義の国であり、よって、人は自分の利益第一で利己主義者、つまり、「自分勝手」であろうと思っていた。ところが、いざミシガン大学の大学院での生活を始めてみると、同期の学生、先生、その他諸々の人たちがとても親切なわけである」(p.46)。ナイスな人達だった。その訳を探っていくことになる。

Bob Dylanの『Planet Waves』(1974年)のアルバムに「Forever Young」という子守唄がある。

「May God bless and you always
May your wishes all come ture
May you always do for others
And let others do for you…」

この歌詞のletという使役動詞に着目した。

「つまり、「人からも親切にしてもらえますように」とは、すでに日本語の概念であり、ディランは実際には、「他の人をして自分に対して親切にふるまわせることができますように」と歌っているのだ。「人から親切にしてもらう」という受け身の社会性ではなく、「人から親切な行動を引き出し、それを自分に向けさせる」という、非常に能動的な社会性がそこにはある」(p.49)。

「個人主義者がなぜ人に対して親切なのか、その理由の一端が見えてきただろうか」(p.51)という。

「アフリカでは、私的利益を追求して初めてグループに貢献できると前章で述べたが、そこでは、そのような行動、つまり、自己促進をして初めて周りからの尊敬が得られていた。同様に、アメリカの場合、本心からの親切をして初めて周りから親切を導き出すことが可能になる。つまり、ある他者に親切にした場合、この特定の他者があなたに対して親切を返すかどうかは、もちろんわからない。しかし、まずはともかく親切にしよう、そして、彼らから親切行動を少しでも引き出せるようにしようという、極めて能動的な社会関係を動機づける文化があるのである」(p.51)というのだ。

「文化心理学が提示する視点は、単なる文化比較の枠を超えた普遍的な人間理解の土台を提供する。たとえば、アフリカの「自己促進的協調」やアメリカの「能動的な社会性」といった異なる文化的特性は、それぞれが地域固有の歴史的・生態的背景から生まれたものである。しかし、それらは単なる違いとしてではなく、未来のグローバルな課題解決に向けた知的資源として位置付けることができる、ここには、分断を超えた新たな可能性が広がっている」(p.69)。

実際にはアメリカ社会の中でも分断が起こっており、分断のあり方をも日本とは異なっているのかもしれない。根底にある文化現象をどう捉えるかは本書を読みながら考えていきたい。

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