井波律子『三国志名言集』岩波書店、2005年
『世説新語』で井波律子氏を思い出した。もう故人となられたので新たに本が出ないのが残念である。参考文献に吉川忠夫『魏晋清談集』(講談社、1997年)が載っているのを見てにやりとした。
本書は『三国志演義』の第120回のなかから、160項目の名言・名セリフを選んで、書き下し分、原文、日本語訳、コメントを付したものである。図版もあって楽しい。
ただ、書き下し文の格調を味わえる世代がどこまでいるのか不明である。『三国志演義』の世界は横山光輝の『三国志』のまんがに始まり、宮城谷昌光氏の『三国志』の小説まで読んできた。しかし、悲しいかなほとんど忘れてしまっているのである。というか、『三国志演義』そのものは読んでこなかったので、この名言集のコメントが新鮮に感じられた。
第一回
分久必合、
合久必分。
この歴史観を現す言葉の切れ味はすごい。
井波律子氏の書き下し文を挙げる。
分かるること久しければ必ず合し、
合すること久しければ必ず分かる。
後漢の崩壊で三国に分裂し、西晋による天下統一で終わるこの三国志の時代のみならず、中国の歴史そのものを洞察している言葉のようである。
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