河内将芳『都市祭礼と中世京都』法藏館、2024年
「序にかえて」を読む。
先行研究が列挙された「序にかえて」を読んでいくと、いちいち注を確認したくなる。河内将芳氏の書かれたものを中心に読んできたことがわかる。関係する論考を読みたくなったが、入手するもの難しいし、そんな時間は多分ないので、この本を大事に読むしかない。
「祇園会に関して著者自身がこれまでおこなってきた作業をのべるとするなら、室町・戦国期の祇園会をめぐって、祇園社の本寺である山門延暦寺やときの世俗権力である室町幕府・朝廷との関係性のなかで、神輿渡御や山鉾巡行がどのような特徴をそなえ、そして変化をとげていったのか、いわば構造的な問題について文献史学の立場から検討を重ねたものとなる」(p.6)。
現在の祇園祭も遠い世界のことでしかない。室町、戦国期の祇園会のことを読んだり、御霊会についても論考を読んできたのは、著者の語り口が好きだからであり、それ以上の理由はない。
第一章 戦国期京都の祇園会と絵画資料
まずは神輿渡御について、文献史学の立場から、文献史料と絵画史料をつきあわせが、初期洛中洛外図のうち東博模本、上杉本と『祇園社大政所絵図』に対しておこなわれる。これは他の初期洛中洛外図(歴博甲本や『洛中洛外図帖』は神輿が四角形、歴博乙本では六角形)に対して三基の神輿がそれぞれ描き分けられていることによる。
こうして御輿渡御をテーマとして文献史料と絵画史料のつきあわせがされるが、「両者のあいだの溝がめだつ」(p.27)ばかりである。これは「天文年間を中心にちょうど初期洛中洛外図の制作されたと考えられている時期の史料が欠けている」(p.26)ことによる。
しかし、著者はこの素朴な方法の限界を示唆している。
「おそらくそれは文献史料によってあきらかとなる事実がいまだ断片的なものにとどまっていることに大きな原因があるのだろう。また、それとともに、初期洛中洛外図に描かれた御輿渡御が、結局のところ画題全体の一部にすぎないというもっとも根本的な問題にもつながってくるのではないかと考えられる」(p.27)。
このあとも山鉾巡行についても、唯一の文献史料である『祇園会山鉾事』と絵画史料のつきあわせがされるが、「深刻な限界を抱えている点」(p.29)が指摘される。本書に図面が用意されているが、手元の史料で確認できないため、佐藤康宏『日本の美術484 祭礼図』(至文堂、2006年)をAmazonでポチした。続きを読むのは勿体無いのでムックが到着してからにする。
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