『和歌とは何か』(2009)その5

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渡部泰明『和歌とは何か』岩波新書、2009年、2013年第3刷

第5章 本歌取りーー古歌を再生する

この本は各章のサブタイトルが気になる書き方をしていると思う。

さて、本歌取りの定義も実にやっかいだということから、少し端折って、定義に入る。

「本歌取り」とは「ある特定の古歌の表現をふまえたことを読者に明示し、なおかつ新しさが感じられるように歌を詠むこと」(P102)。

「過去の和歌と同じ表現を用いて新しい歌を詠むこと」(P97)は「類歌」と呼ばれるという。

「ある特定の和歌の表現をふまえて新しい歌を詠むこと」(P98)は「参考歌」と呼びならわしている。

なるほど、「本歌取りは、縁語の発展した形式」つまり「縁語は言葉そのものの類縁性に依存するのに対して、本歌取りでは本歌によってそれらの語句の関係性が根拠づけられている」(P108)ことの違いだ。

「読者に明示」いうところが肝である。「本歌取りというのは、その基本として歌人たちの集まる場に興趣をもたらすという、場に規制される」(P116)から、同じ文化的背景を持った人々(つまり貴族)のサークルでしか成立し得ない。

「本歌と贈答歌の関係になるように本歌取りした歌は、「贈答の体」の本歌取りと呼ばれ、本歌取りの基本的なスタイルの一つとされた」(P111)。

こうして、色々な概念を並べてみたけど、実際の和歌を鑑賞しないと分からないのであるが、そもそも元歌である本歌が何故それか分からないので、解説されたものを読んでも、その鑑賞に入って行きにくい。しかし、本歌を基にした歌を作ることは、サブタイトルにある本歌を再生することでもあるというのは分かるきがする。

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