八朔に想う

断片記憶
八月一日(八朔)に祇園町の芸舞妓さんが、井上八千代さんお師匠さんやお茶屋さんへ絽の黒紋付を着て挨拶する習わしがある。呂は涼しげであるが、京都の茹だるような暑さでは気を引き締める以外に対処する術はない。
夏の京都の記憶がだいぶ薄れてきた。八朔の日はカメラを持って芸舞妓さんを追いかけまわすというのがニュースになっていた。そんな場所には行かないようにしていたので、どこで過ごしていたのだろうか。美術館も夏枯で企画展らしいのはなかった。
奈良には三輪素麺を食べに行ったことは覚えている。三輪山にも登拝した。そして、夕方にはいつも通り先斗町の暖簾を潜っていた。
40度近い暑さの中へ出かけることは今では考えられない。そんなに体力は残っていないし、執心するものもない。文法書をめくり、辞書を引いて本を読むことくらいしか思いつかないでいる。
注)花街での言い方は◯◯さんお姐さん

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