人を発見することは、その人の生き方に関わる。私はどれだけの人を発見したのだろうか。書物を読むことは自分にとって事件である。ある言説が事件性を持つ時、その言説に出会うこともまた事件である。
内村鑑三の『代表的日本人』は内村鑑三が発見した人が挙げられている。生年順に日蓮、中江藤樹、上杉鷹山、二宮尊徳、西郷隆盛となる。若松英輔氏の100分で名著が2016年1月に放送されたばかりで記憶に新しい。若松英輔氏が内村鑑三の本も読まれなくなってきているという話をしたのは一昨年の暮れの「読むと書く」だった。
何故、代表的日本人なのか。そして、何故、中江藤樹なのか。
子安宣邦氏は何故、中江藤樹が近江聖人と呼ばれたのかと提起した。聖人と称される日本の儒者は他にいないのだ。
Amazonで取り寄せた日本思想大系第29巻は『中江藤樹』である。月報の福永光司「中江藤樹と神道」を読むと、『翁問答』に中国の神道と日本の神道について論及しているところがあるという。江戸初期の儒学者と孔子では2千年の月日が経っており、日本の思想空間にあった中江藤樹はどう世界を解釈していたのか。少し読んでみることにする。
山井湧、山下龍二、加地伸行、尾藤正英『日本思想大系〈29〉中江藤樹 』岩波書店、1974年
文集(2編)
「安昌弑玄同論」
「林氏剃髪受位弁」
『翁問答』山下龍二校注
『孝経啓蒙』加地伸行校注
『藤樹先生年譜』尾藤正英校注
解説
「陽明学の要点ーー王陽明の〈心即理〉〈知行合一〉〈致良知〉〈事上磨錬〉ーー」山井湧
「中国思想と藤樹」山下龍二
「『孝経啓蒙』の諸問題」加地伸行
「中江藤樹の周辺」尾藤正英
解題
月報
「中江藤樹と神道」福永光司
「日本思想史覚書き(18)」寺田透
「往生伝編集者たちの夢」平林盛得
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