前田速夫『老年の読書』新潮選書、2022年2刷
前田速夫氏の『老年の読書』でテオプラストス『人さまざま』(森進一訳、岩波文庫、1982年)から「年寄の冷水」を抜書きしてみた。
「年寄の冷水とは、年甲斐もなく、教養ごとに憂き身をやつすことであると思われる。そこで、年寄の冷水をやる人とは、およそつぎのようなものである。すなわち、齢六〇に及んで、佳言名句を学ぶが、いざ酒席で口にする段になると、ころっと忘れてどじをふむ」。
いつのまにか、年寄を揶揄っていた自分が、テオプラストスに揶揄われる齢になっていた。まして、羅和辞典を引きながら構文解釈をして夜の貴重な時間を使うのは「年寄の冷水」以外の何者でもないだろう。
川本三郎氏の帯の宣伝文句に釣られて、買う予定にない本を買ってしまった。もう積読しないと決めているので、買ってきてそのまま読んでいる。谷沢永一氏がいうように、モラリストを読む年頃になっているので、そういう本を読めば良いのにまだ道草している自分が可笑しくなる。面白い本を読んでいる人を参考にしたくなるのである。
著者の前田速夫氏は新潮社で文芸誌『新潮』の編集長を務めた人だ。定年後に癌を患い、「退院すると、残された時間を考えて、書斎や書庫の断捨離にかかった。手ばなすのが惜しまれたが、調査・研究に必要な本と、長年愛読した文芸書、思想書、哲学書や各種の全集以外は、思いきって処分した」(pp.3-4)。
私も本の断捨離が必要になっている。違いは、現役しているので仕事の本は断捨離できない。趣味の山岳書、将棋本、京都本、歴史書、図録も断捨離できないでいる。
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