三中信宏『読書とは何か 知を捕らえる15の技術』河出新書、2022年
プロローグでやられたので、第1章 知のノードとネットワークを読む。ここは総論の位置付けであり、著者は「読書」を「一種の狩り」と考えており、キーワードがサンプル、ノード、ネットワークそしてアブダクションと出てくる。ダーウィンの『種の起源』を例に著者の読書方法が語られるのを読むと「狩猟」としての読書のイメージが湧いてくる。著者は進化生物学・生物統計学の専門家である。
ノードというとコンピュータをやっている身からすれば、ネットワークの線に対する点である。著者のいうノードは結目であり、狩猟者の目から見れば本に残された跡である。読者は本という未知の森に分入り、自分で備忘メモから読書ノードを構築しながら著者の跡を辿る(往路)。そして、読み終わったら、ノードをまとめて本のネットワークを完成させる(復路)。
ノードの例として、事例枚挙、一般理論、反論防御、理論適用、総括を章に付けるやり方は参考になった。見通しが良くなる。
用語に関してはサンプルの説明はなく「サンプリング」が索引にでてくるが、ノードのサンプリングとして使われており、ネットワークを作るための読みの痕跡の数が少ないとネットワークができない。
アブダクションは「部分から全体への推論」(p.73)である。「既知の断片的な情報から未知の全体像を構築する推論様式であるアブダクション」(p.74)は読書を終わりのない探索に導くという。読書に完成はない。
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