『中世政治思想講義ーーヨーロッパ文化の原型』(2024)

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鷲見誠一『中世政治思想講義ーーヨーロッパ文化の原型』ちくま学芸文庫、2024年

序章

ヨーロッパ文化の四つの基本的構成要素

第一番目 ギリシアの哲学

第二番目 古代ローマの法律・政治の理念と制度

第三番目 キリスト教の信仰

第四番目 ゲルマン人の民族的慣習

ヨーロッパ文化の独自性とは何か?

日本はヨーロッパ文化から何を学ぶべきか?

「私の観点から見てヨーロッパ文化でほかのものには見られない独自で重要なものが一つあります。それは普遍的にして超越的なるものを志向する激しい意志と密接不可分な形で成立した、合理性なのです。この合理性というのは、難しい言葉になりますが、理性の方法的自覚化ということ、もう一つは理性の自覚的方法化です。これを合理性と私は定義しておきます」(p.14)。

合理的思考や合理的行動は一般的にある。

「理性の活動がそれ自体で意味があり、その理性の活動を徹底的に究明していくということは、ギリシア人がなしたことなのです。これを学問といいます」(p.15)

「理性の活動ではありますが、技術とは、生活上に必要なある目的のために人間の理性、合理的思考を駆使して何かを完成する、追及するということです」(p.15)。

「問題は、ギリシア人がなした学問の成立、これだけでは、合理性が人間生活の全体を貫通するようなものにはならないのです」(p.16)。

「つまり人間の理性の能力を妨害したり、人間理性の活動範囲を狭めるような魔術から人間が解放されていなくてはならないのです」(p.16)。

ヨーロッパで16、17世紀に魔術の駆逐がなされ、合理性が追求された。その準備段階として中世をみる著者の歴史観は面白い。信仰(キリスト教)と理性(ギリシア哲学)の葛藤がどのようなものだったかはスコラ哲学研究者の山内志朗氏のチャンネルを1年間視聴してみて朧げながらわかってきた。

魔術の駆逐というとは魔女狩りに象徴されるので池上俊一『魔女狩りのヨーロッパ史』(岩波新書、2024年)も気になっていたので、この本に繋がるようだ。

序章をkindle版のサンプルで読んで著者の問題意識に親和性を感じたが、森有正『バビロンの流れのほとりにて』が参考文献及びあとがきに出てきて納得した。

鷲見誠一(すみ せいいち、1939年生まれ)

中世政治思想講義

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