桃崎有一郎『京都を壊した天皇、護った武士 「一二〇〇年の都」の謎を解く』NHK出版新書、2020年
後醍醐天皇の京都破壊の話の前に、本論と関係ないところで、桃崎有一郎氏の考え方を見ておきます。
桃崎有一郎氏は<なぜ天皇家が滅ぼされなかったのか>という、日本史最大の謎に答えてます。
それは、「天皇が"日本国の秩序の原点であり管理責任者"だからである」(P42)といいます。
以下、冗長になりますが、説明を引用します。
「官位は日本の社会秩序の重要な物差しだった」(P43)。
「その官位は、朝廷が管理して与える。天皇の名で与えられるが、巨大なシステムなので、管理や審査・手続きのために多数のスタッフが要る。それが、社会全体に対する廷臣の最大の存在意義であり、だからこそ天皇と廷臣を合わせた朝廷全体に、存在意義があった」(P44)。
一般書であるので、引用するにはやや引き締まりのない文章であることは仕方がありません。
冗長ついでに引用を重ねます。
「すべての官職は、"天皇にどのような仕事で奉仕するか"を肩書き化したものである。つまり、位階も官職も"天皇にとって何者か"という観点で表現されたものだ。その意味で、天皇は官位の発行源でえるびかりでなく。多数の官位が織り成す座標系の原点なのである。原点がなければ座標系は存在できない。だから天皇は不可欠だった」(P45)。
「以上から、武士が天皇や朝廷を滅ぼさない理由は明らかだ。天皇には官位の発行源・原点として、朝廷には官位の管理機関として、唯一無二の価値があったからである」(P45)。
以上、証明終わり。
桃崎有一郎氏は「天皇制は世論と一体なのである」(P46)と怖いことをいいます。「天皇への敵対が世論の総反発に直結するのは、天皇が"今日までの社会秩序”の要だからである」(P46)。
桃崎有一郎氏は天皇家の宗教的権威については述べていません。第二次世界大戦で明治天皇制国家は崩壊し、戦後は官位について天皇の価値は形骸化しました。しかし、天皇の祭祀権は依然として残っています。「祭ごとは政りごと」といわれた時代から現在に至るまで。
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