平山優『真田信繁 幸村と呼ばれた男の真実』角川選書、2015年
本の鮮度ということを書こうとして、書ききれずになった。「江戸時代前期には、すでに真田人気は不動のものであったし、近代になっても明治末年から昭和初期にかけて一大ブームが到来」した。「真田と十勇士たちの活躍は、戦前ばかりか、戦後になってもテレビドラマなどで繰り返し放送され、人々を魅了し続けてきた」。時代劇が放送されなくなったが、来年は「真田丸」がNHKの大河ドラマだ。真田人気は鮮度を失うことがないようだ。
本書はドラマとしての真田幸村ではなく、史実としての真田信繁を探る本である。当然、第1級史料である発給文書の研究から始めなければならない。真田信繁は、しかし、軍記物で生涯を語られてきた。著者の平山優氏が史料の乏しい状況は戦前と変わらないという。そうした中で、兄信之と違い実戦経験の少ない信繁が真田丸で活躍できたのは何故なのか。やはり、着想がなければ始まらない。本をじっくり味わうには晩秋が良い季節だ。
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