コンパスローズの引き方

Goinkyodo通信 読書時間
ピンポイントで辞書を引く
薬袋善郎氏が最近の著書の中で『コンパスローズ英和辞典』(研究社、2018年)を使ってピンポイントで辞書を引く仕方を説明していたのが参考になった(注1)。中辞典で触れていない情報は一般的ではないということだった。
具体的に見ていくと、以下の文の動詞calledの使われ方がわかるためには辞書をどう引くのか。
A doctor called Alex told him the result of the X-ray examination.
callは第4文型でも使うが、受動態では第4文型を普通使わない。このことを辞書からどう読み取るのか。辞書ではV+O+Oの説明がされている。しかし、受動態まで説明してはいない。薬袋善郎氏は辞書を注意深く見ると察知できると云う。
他動詞❺の言い換え
Please call a taxi for me [V+O+for+名]= Please call me a taxi[V+O+O]タクシーを呼んでください)(コンパスローズ英和辞典、252ページ)。
ここから、
I called Alex a doctor.を受身にしてA doctor was called Alex.とは言わない。受身の場合、A doctor was called for Alex.と言うことが読み取らなければいけない。
したがって、A doctor  called Alex.アレックスのために呼ばれた医者ではなく、アレックスと呼ばれた医者と解釈することが正解となる。
前置詞がtoでなくforになる動詞は受動態では第4文型を取れず、受動態では第3文型を使うという文法知識がないとせっかくの言い換え情報を活かせないのであるが、辞書を注意深く見るということの一例を知ることができた。
どうして『コンパスローズ英和辞典』にしたのか
処分されずに手元に残った岩波書店の『新増補版英和中辭典』(1952年)はさすがに古くなってしまった。薬袋善郎氏の著書に挟んであったチラシを見て、中辞典ながら10万語を超える辞書であるから、今の私が使うにはちょうどよいと『コンパスローズ英和辞典』を買ってきたのだった。webの無料の辞書はピンポイントで引けないので紙の辞書にした訳だが。電子版もあるが、例えばiPadでkindle を読みながら電子辞書に画面を切り替えると短期記憶力が劣化した私は元の文を忘れてしまうという欠点がある。
少しやる気を出しているのは辞書を備えないと読めない本が増えてきていることもある。その点で国語辞典は電子辞書でよいと思っている。人の遣い方を知るのが目的であり、自分が難しい熟語を遣うことは想定していないからである。寧ろ必要なのは哲学用語辞典やこの間手に入れた『ハイデガー辞典』のような用語を多角的に分析したものである。言葉をどういう背景で遣っているのか本を読んでいてもわからないことが多い。ドイツ語辞典ギリシャ語辞典やラテン語辞典を引いてもなかなかピント来ない。やはり専門家が読み込んだ経験を利用するに限る。
(注1)薬袋善郎『基本文法から学ぶ 英語リーディング教本』研究社、2021年、418、419ページ

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