川北稔『砂糖の世界史』岩波ジュニア新書、1996年、2021年第41刷
サトウキビというと沖縄での黒糖作りを思い出した。製造過程を見たり、製糖事業の歴史を振り返ったパネルを見てそう遠くない話だと思った。本でも少し読んだかもしれないが、本書のように世界商品としての砂糖の話は読んで来なかった。
あとがきで川北稔氏は、「世界システム」論と歴史人類学の方法で本書を書いてみたという(p.207)。「世界システム」論はイマニュエル・ウォーラーステインが提唱した「近代の世界をひとつながりのものとみなす考え方」(同上)である。
歴史人類学とはなんであろうか。
「歴史人類学は、歴史上の人びとのくらしの実態を、モノや習慣などをつうじてくわしく観察しようとする学問」(同上)であるという。
シドニー・ミンツの『甘さと権力 砂糖が語る近代史』ちくま学芸文庫、2021年)がその例であり、川北稔氏は和田光弘氏とともに翻訳している。
砂糖が一国史でなく世界史であることが、よくわかった。植民地をモノカルチャー化した歴史が構造的な問題を生んでいる。世界システムとしての貿易の本を読んできたわけだが、ホッブスの生きた時代が少しわかりかけてきた。思想の背景をもっと知りたくなる。この本ではイギリスの産業革命が通説的に描かれていたが、詳細について知りたくなった。ようやく趣味の読書になったようだ。
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