安東次男『古美術の目』ちくま学芸文庫、2001年
書誌情報
1983年筑摩書房から刊行されたものは大型の本だった。文庫版の解説は粟津則雄氏で正解だ。全てを引用したくなる。
「われわれがふだん接するような古美術鑑賞の文章とはおよそそのおもむきを異にする」(P391)。
「安東次男の場合は、読み始めるやいなや、たちまちわれわれは、その種のあいまいな安定とは無縁な、対象と筆者の眼とのあいだの、殺気をはらんだ緊迫した劇のなかに引き込まれるのである」(同上)。
粟津則雄氏は「劇を作りあげる」(P392)と表現する。
安東次男の評釈を読み慣れたものは、このスタイルにワクワクする。古美術から入り安東次男を知らない人には粟津則雄氏のアドバイスが親切であろうと思う。
「しがらきへの道」を読むと焼物の土の話から始まるが既に分からない。信楽焼の起源を考えて、聖武天皇の盧舎那仏建立の詔勅から紫香楽宮が延々と検討されて「随分と話しを持って廻った」(P026)あとで百済寺の「うずくまる」の話になり、信楽を詠んだ和歌を分析して終わる。歴史好きでなければお腹一杯になるところだ。それでいて、焼物の起源を製法、土あるいはデザインから述べていくことに付き合わなけれならない。後者の知識がない私は入門書を探したほうが良いのだろうが、よい入門書を見分けることが出来ない段階なので、硬質な安東次男の文章を味わうことで満足することにする。
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