岡崎久彦『陸奥宗光とその時代』PHP文庫、2003年
書誌情報
『陸奥宗光とその時代』PHP研究所、1999年刊行の文庫化。文献目録、陸奥宗光年表、索引がある。
「本書は、明治維新から第二次大戦の敗戦まで七十七年間の日本外交の歩みを辿ろうという試みの第一巻をなすものである」(P594)とあとがきに趣旨が述べられている。
岡崎久彦氏は陸奥宗光の生涯を描いた『陸奥宗光』の上下巻があり、本書はそこから、日本外交を抽出している。今まで人物の歴史から明治・大正を読んできたので、外交史としての通史は読んだことがないことに気づいた。確かに、大学では条約や協定などの外交文書を読んできたので、ポツダム宣言を読んだことのない人の議論は聞くに耐えない。
伊藤之雄氏の『昭和天皇伝』(2014年)や『真実の原敬』(2020年)などの伝記・評伝を読むのと並行して、子安宣邦氏の下で『大正を読み直す』(2016年)、『「維新」的近代の幻想: 日本近代150年の歴史を読み直す』(2020年)で取り上げている思想家の文書を市民講座の中で数年かけて読んできた。明治国家が負った外交課題も近代のプラクティスをみていく場合に必要だと考えるようになった。東アジアの激動する歴史の中にいるという自覚が日本人のなかに薄いのではないかと感じるのである。
注)奈良岡聡智『対華二十一ヵ条要求とは何だったのか―第一次世界大戦と日中対立の原点―』(名古屋大学出版会、2015年)などの日本外交の部分的な著作をまとめるアイデアが欲しいと思ったので、年表も買い求める必要があると思っている。ただし、短期間に読んで終わりというわけではなく、参考文献等広がることは想定されるので、取り組むには早いのかもしれない。いずれにしても、日本の歴史を読むことで、日本を知ることが目的であることには変わりがない。古代、中世、近世、現代と濃淡はあっても読んでいくことに変わりはないだろう。三日坊主の私が続けていることのひとつである。
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