『真実の原敬 維新を超えた宰相』(2020)その2

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伊藤之雄『真実の原敬 維新を超えた宰相』講談社現代新書、2020年

原敬(たかし)は旧南部藩の家老級の家に生まれた。従って、士族に分類されるのであるが、若い時に分家して平民となった。だから、日本最初の平民宰相というわけだ。内実は士族であったことなど今まで知らなかった。

伊藤之雄氏の筆致は、原敬が直面した困難と原敬が認知領域を拡大していく様を丹念に描いていく。原敬の限界を示しながら、原敬がその限界を克服する様を書くことで、原敬の思想の形成過程を見せてくれた。最初から偉人に描かれるとついていけないのだが、原敬は外交に進みたかったが試験に落ちてばかりだと言われると親しみを持たないわけにはいかない。

初期の政党政治を描いたところについては、歴史の知識がないので面白みを感じないが、国際政治のなかで、原敬の対米分析を見ると、第一次世界大戦後で浮かれているリーダーばかりでなかったことが分かる。原敬がいたならば明治維新を推し進めることで直線的な攻め合いとなる局面を避けられたのではないか。そう思はざるを得ない。それくらいのリーダーだったと思う。

原敬を読んでいくと、伊藤博文や陸奥宗光が読みたくなる。そのくらい魅力的な人物に描かれている。

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