『宿所の変遷に見る 信長と京都』(2018)その2

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河内将芳『宿所の変遷にみる 信長と京都』淡交社、2018年

信長の京都の宿所を永禄十一年(1568年)から天正十年(1582年)まで日にちで追求した本である。太田牛一の『信長公記』などの二次資料を極力使わずに同時代の日記に基づき記述している。マニア御用達の本である。

河内将芳氏は信長と京都の関係は「不幸な関係だったといえば、いいすぎだろうか」(P160)とあとがきにかえてに書いている。宿所からみると、信長は京都に城を構えていない。寺院を宿所にしており、配下にも屋敷を持たせていないという。しかも、洛外や上京を焼き払ったり、京都に住む者にとっては迷惑この上ない存在であった。日蓮宗の寺院が度々宿所となっており、著者の『日蓮宗と戦国京都』(2013年)も内容を忘れていたので、読み返してみたい。

いったい、歴史地理学なるものは好き者であって、読んだからといって何に役立つものでもない。好奇心が刺激されればそれでよくて、新たに知ったことで、また興味が湧くのである。著者の「信長在京表」も決定稿ではないという(P12)。しかし、改めて「信長在京表」を見ると信長は暮れから正月を京都で過ごしていない。天正十年は3日間しか京都にいない。安土城は1日の距離であると思うと油断するのも無理はないと思った。

堀正岳氏の『知的生活の設計』(KADOKAWA、2018年)でいう積み上げが少しはされた分野であるから、読んでいてあそこはどうなっているか、気になるのである。となるとなかなか本も処分が叶わぬわけである。

キーワード

#京都 #河内将芳 #信長

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