上山春平『哲学の旅から』朝日選書、1979年
上山春平が自身の哲学の旅を振り返っている。「山城と国家論」は未完に終わったが、「徳川幕府の成立に先行する四世紀間の山城の歴史を、律令国家の確立に先行する数世紀間の古墳の歴史に対応させてみたい思いにとらえられている」(P247)という。
「古墳の歴史が終焉に近づいた七世紀の後半ころ、国ぐにの豪族の本拠のあたりに、三重、五重の寺塔が相次いで出現した姿は、山城の歴史が終焉に近づいた十六世紀末から十七世紀初頭にかけて、国ぐにの広びろと開けた沖積世のどまんなかに、白壁の天守閣が相い次いで出現した姿のくりかえしのように思われてならない。だが、それは、はたして何のくりかえしなのだろうか」(P247)。
この国が統一の方向に動いているとき、シンボルが共有される。では、明治国家のモニュメントは何だったのだろうか。日本全国を巡った鉄道だろうか。大海の藻屑と消えた軍艦だろうか。
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