堀田善衞『ミシェル 城館の人 第一部 争乱の時代』集英社文庫、2004年、2007年第2刷
『エセー』を書いたミシェル・ド・モンテーニュについての堀田善衞の伝記小説は3巻本であった。菅野昭正氏の解説が各巻にある。谷沢永一は歳をとったらモラリストを読めと書いていたが、モラリストの伝記小説を読むことが先になってしまった。あとは、堀田善衞との呼吸だけが、問題になる。
舞台は16世紀のフランスである。新興のブルジョワが土地付きの城館を買って領主となった。その家に生まれたミシェルの話だ。
ミシェル・ド・モンテーニュ(1533-1592)の生きた時代は宗教戦争の時代である。タイトルの争乱の時代とはそういう背景だ。我々の時代もまたイデオロギーによる対立の時代を経験した。今は『文明の衝突』の時代と言って良い。
著者の堀田善衞を菅野昭正氏は「乱世の小説家」と解説で評している。20世紀を世界大戦の時代とみれば、乱世をどう生きるかは切実な問題である。定家の明月記を読むことも、武士の時代という乱世を生きた定家を考えるという視点がある。
さて、3巻を読む長い旅に出ることにしよう。
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