原念斎、源了圓・前田勉訳注『先哲叢談』東洋文庫、1994年、2006年第2刷
原念斎の『先哲叢談』を買おうと思って、日本橋丸善に行ったら、置いてなくて、火曜日に神保町の東京堂書店で手に入れた。
なぜなのかというと、訳注者でもある源了圓氏の『徳川思想小史』(1973)を読んでいたことと、懐徳堂での講義で子安宣邦先生がネタ本に使っているという話をしたので、生き方などのエピソードなら読んでも楽しいのかなと思ったのだった。
解説を読むと、
源了圓氏が『先哲叢談』を「デューラントの『哲学夜話』という、通俗的ではあるが大変興味深い、人物本位の西洋哲学史の入門書を連想した」と書いている。
さらに、長いが引用する。
「ところで書下し文の作成や注解の仕事を担当された前田勉君の非常な骨折りのおかげで、この本の著者原念斎の引用していた逸話その他は、確かな証拠に基づくものであることが明らかになり、その上、念斎の思い違いや、引用している文献そのもののミスも訂正されて、『先哲叢談』は研究者としても利用できるそのあるべき姿を見せるようになった。そして『先哲叢談』は一般の読書人にとって、江戸時代のある側面を内側から知ることのできる魅力ある読物であるとともに、近世儒学の研究を志す人にとっても最良の手引書としての姿を示すようになったと思われる」。
なんか自画自賛のようであるが、一般の読書人にとって「使える」ありがたい本というわけだ。
次に原念斎の祖父の原双桂の話がでてきて、本の最後で、荻生徂徠の22条に次いで20条を費やしている。ちなみに中江藤樹10条、熊沢蕃山13条、貝原益軒11条、伊藤仁斎17条、伊藤東涯14条だ。
『先哲叢談』8巻に取り上げられた儒者は永禄から享保に至る間に生存した藤原惺窩から原双桂にわたる72人である。「先哲叢談凡例」によれば14巻のうち8巻を刻したとある。
原念斎の死後、東条琴台が『先哲叢談後篇』を出すに当たってのエピソードも面白い。
凡例を読んでおく。
書き下し文は歴史的仮名づかいに従い、適宜つけた振り仮名は新仮名づかいとした。
漢字は新字体・通行の字体に改めた。
解説によると慶元堂、擁万堂版を底本としたとある。
出典が分かるものは各条に明示してある。
やはり、人を知ることが一番楽しい。藤原惺窩が藤原定家の子孫であることは、鎌田東二氏の読物で知ったばかりだが、父や兄が別所長治に滅ぼされたのは知らなかった。
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