『新版 徒然草 現代語訳付き』(2015)

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小川剛生訳注『新版 徒然草 現代語訳付き』角川ソフィア文庫、2015年

解説だけを読む。

兼好法師が卜部氏の神祇官人で吉田社の祠官であった吉田家に生まれたとする従来の通説を小川剛生氏は否定する。詳しくは「卜部兼好伝批判ー「兼好法師」から「吉田兼好」へ」(国語国文学研究〔熊本大学文学部〕49、平26・3)を読むことになる。

ここでは、解説で小川剛生氏が説明したことをまとめておく。

兼好法師は生年を明示する資料はない。小川剛生氏によると、「吉田兼好」は吉田の家号が室町期に入って用いられたことから勿論誤り。兼好法師を卜部氏の出身としたのは吉田兼俱の捏造であるとした点が核心である。

小川剛生氏は正徹物語を根拠として、滝口として朝廷に仕えた六位相当の侍であったこと、金沢貞顕に「卜部兼好」と名乗る被官が知られており、顕定の使者として鎌倉に下り、金沢の称名寺に立ち寄ったことをあげ、徒然草でも東下に触れており、金沢貞顕の関係者との交流からみて兼好法師と考えている。

兼好は正徹物語で俗名を法名として使ったとする。中世の勅撰集は五位以上は俗名とし、六位以下は俗名では入集させないとする。兼好法師という法名で勅撰集に入集していことから、在俗時には六位の侍で終わったとみている。

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