「琴ならし」の話(天心の『茶の本』の大塚パラフレーズ)は読むことの本質を問うもので面白い。大塚久雄氏のゼミナールに著者が聴講を許された時の開講の話が昨日のことのように話される。
仙人が献上した琴を誰も鳴らせることができないなか、伯牙という乞食坊主が歌うだけで琴をして鳴らせてしまう話を取り上げて、資料の扱い方を強調されたという。
「史料、歴史上の資料はしゃべりたいことをいっぱいもっていて、聞き手を待っている」。「無為にして読めず、強引に失して読めないのが資料をして自ら語らしめる伯牙の心尽くしが本を読む要点」と結ばれた。
大塚パラフレーズは「無能組」と「独善組」の活躍が目立つ、しかし、岡倉天心の『茶の本』は、わずかに暗示しているだけとして、大塚氏の読み方に感心している。
内田義彦著『形の発見 改訂新版』(藤原書店、2013)
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