瀧本哲史氏は『読書は格闘技』(集英社、2016年)のあとがきにかえて「読書は感想戦」を書いている。感想戦とは将棋などの対局後に対局者が一局を振り返り、手の良し悪し、敗因や局面の優劣などを評価し合うことをいう。TVの感想戦は短いが見れば少しはイメージが湧くかもしれない。
本のタイトルである「「読書は格闘技」だとしたら、「読書は感想戦」という考えが方もあるだろう。一冊の本を読み終えた後に、自分なりに読書体験を振り返ってみるという行為である。あるいは、同じ書籍を読んだ人と議論を戦わせたり、他の人に本を紹介して、反応を見てみるのも、「感想戦」たり得る」と瀧本氏が書いている。
将棋などの感想戦に見立てたのは秀逸である。ただ、「読書は感想戦」では話が通じない。読書=感想戦ではない。読書後に感想戦のような反省が必要ということだ。本を読んでも忘れてしまってはもったいない。
瀧本氏は12ラウンドを用意しテーマに於いて対照的な本を組み合わせて闘わせている。
私的にはRound4の時間管理術をテーマとしたエリヤフ・ゴールドラットの『ザ・ゴール 企業の究極的な目的とは何かと』✖︎デビッド・アレンの『はじめてのGTD ストレスフリーの整理術』が興味深かった。
GTDはGetting Things Doneの略である。目の前のことに集中することで時間に追われる感覚を解放するということである。仕事を書き出してリストして、頭の中を空っぽにして仕事をする仕組みだ。優先順位を決めない仕組みだと瀧本氏は書いているが、それは誤解しているか簡略化した言い方である。GTDの中で重要なのは何をしなければいけないかを決めることにあるのだ。従って週末に数時間かけて、リストの見直しや検討をするのに対し、3分以内で出来る仕事は直ぐにしてしまうという方針で働き、3分を超える作業は紙に書き出して、後でスケジュール化するのである。
ザ・ゴールは生産工程における制約理論を小説で表した大著(500頁以上あるはず。若者に処分されたので、今は確認できない。)である。日米摩擦で翻訳化を30年止めていたとの刺激的な帯を見た気がする。『ザ・ゴール』では教授がヒントを与えるが答えは教えない。経営者が自ら答えを導き出す物語だ。
全体最適をどうするかは、生産現場では考えられてきたが、ホワイトカラーやサービス業では部分最適が残っていると瀧本氏は指摘している。
何故か、『もしドラ』✖︎『ザ・ゴール』に話は変わり、「わかりやすく図式化すると、『ザ・ゴール』の学び方が「大学、大学院での学び方」だとすると、『もしドラ』は文字通り「高校生の学び、」である。そこには新しい知識、コンセプト自体の創造や科学性、実証性は欠如している。同じ数百万部売れた本を比較するだけで、アメリカと日本のビジネス書の読者層ないし問題意識の違いに驚かされる」と書いていて、私も同意する。
「個々の時間管理を向上させるためには、関連情報をネットで読めば良いだろう。だが、効率よくする、組織としてかかる時間を短くするとはどういうことか考えたいのであれば、五百ページであっても『ザ・ゴール』は時間対効果の高い本だと言えるだろう」。
関連でハイデガーの『存在と時間』をあげていたのは笑える。
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