『新版企業の人間的側面』(1970)

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ダグラス・マグレガー、高橋達男訳『新版企業の人間的側面』産業能率大学出版部、1966年、1970年新訳、2009年新訳50版

 

経営学でX理論、Y理論を習わないことは無いと思う。しかし、経営学の概論書を読むことはあっても著者の本を読んだという人の話はあまり聞いたことがない。これだけ版を重ねているにもかかわらず。こうした経験は、以前、カエサルの『ガリア戦記』(岩波文庫)を読む人が周りにほとんどいなかったことで味わったことがあった。話が通じないのである。人類史上の有名人といってよいカエサルの本の面白さを話す私は篤志家扱いされたものだ。塩野七生氏の『ローマ人の物語』第4巻(1995年)が出てガリア戦記を読むことになった人は多いと思う。この頃は『ガリア戦記』の話をしても違和感を持たれることがなくなった。

 

そういうわけでいまさらマグレガーのX理論、Y理論の本を読んでいるのは、X理論、Y理論を語るためではない。理論と現実のギャップを常に感じて仕事をしている実務家にとって、公式だけを覚えても仕方がないものである。

 

「専門家というものは目標を達成しようとする場合、まず知識にたよろうとする。(省略)専門家というものは、自己の領分に関する科学的知識、同僚のもつ知識、あるいはまた自らの体験を通じて得た知識を元手にしているものである。体験よりも科学的知識や同僚のもつ知識をたよりにするところが、素人と違うところである」(P3)。

 

人間的側面とはよくいったもので、専門家の考え方や行動パターンを知ることは、そのアドバイスを評価する上で参考になる。

 

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