『明治維新の分析視点』(1968)

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上山春平『明治維新の分析視点』講談社、1968年
今時、明治維新に関して半世紀以上前の論考を読む意義はあるのだろうか。歴史家の評価はともかく、哲学者が国家論を述べる視点は整理しておきたいと思った。
戦後の明治維新論は講座派理論が主流であったと上山春平はいう(p.9)。上山春平はその批判をすることから始めている。
「明治維新の性格規定を一つの焦点とする日本資本主義論争は、維新をブルジョワ革命と見るか否かという問題をめぐって、肯定の立場をとる労農派と否定の立場をとる講座派が、同じマルクス主義的歴史観に立脚しながら、対立する見解を展開したのであるが、そのばあい、ブルジョワ革命のモデルとして、両者ともに、暗黙のうちに、もしくはあからさまに、フランス革命を規定していた。そして、フランス革命の過程で、封建的土地所有が廃棄された点が、ブルジョワ革命の基本条件として注目された」(p.10)。
結論は、「講座派は地主制の廃棄なしには封建的土地所有の廃棄とはいえない、と言うのである。しかし、こうした主張をつらぬこうとすれば、明治維新ばかりでなくフランス革命もブルジョワ革命とは言えなくなる、という事実が明らかになったのである」(p.11)。
「ともあれ、これまでに発表してきた私の維新論の特徴を、私なりに要約してみると、(1)日本資本主義論争の問題提起を、一応政治的な立場と切りはなして、できるだけ純粋に理論的なレヴェルで受けとめようとしたこと、(2)明治維新とフランス革命の比較を通して、講座派と労農派のブルジョワ革命観の当否と、それぞれのブルジョワ革命観を基準とする維新の性格規定の当否を検討したこと、(3)その結果、講座派の主張と対立し、労農派の主張と一致する維新ブルジョワ革命説に到達したが、労農派の弱点とみられる国家権力の規定にかんして、初期ブルジョワ国家説を提出したこと、といったあたりに落着くだろう」(pp.11-12)。

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