吉川幸次郎『古典について』講談社学術文庫、2021年
吉川幸次郎が伊藤東涯を誉めていたのは『制度通13巻』という漢文の歴史書であったが、よく論じていたのは『秉燭譚(へいしょくだん)5卷』という随筆であった。こちらも漢文である。夜に灯りをともして書物を読み、考証したことを書き留めたものである。
安積澹泊(あさかたんぱく)にいつてのエピソードは、考えさせられるものがあった。北京大学の周作人氏から安積澹泊他の書を求められた吉川幸次郎が寺町の古本屋の竹苞楼に連絡を入れて本を持って来させた。お目当ての本はなかったが、そのうちの『湖亭渉筆』読み始めたら面白くなってしまい。自分の分も古書店に探すように依頼したのであった。昭和15年の日中戦争の最中の話である。そんなことが可能だったのか。
注)「「湖亭渉筆」四巻、安積澹泊の漢文の随筆である。享保十二年の室鳩巣の序と、同じ年の自序がある。澹泊七十二歳の時である」(p.183)
早稲田大学のアーカイブでみると、享保十二年歳次丁未春三月十五日鳩巢老人室直清序は太字の楷書、同年の澹泊の自序は草書、本文は楷書になっていたので、吉川幸次郎の見た「湖亭渉筆」もこの版であろう。澹泊の自序は達筆でむずい。
https://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/i05/i05_01255/i05_01255_0001/i05_01255_0001.html

『古典について』(2021)
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