直木孝次郎『古代日本と朝鮮・中国』講談社学術文庫、1988年
書誌情報
昭和34年から昭和61年までの論考をまとめるにあたり誤植を訂正したほか若干手を加えたという。初出一覧と索引が付く。
直木孝次郎が古代史で受けた衝撃について書いていた。
「那珂通世の『上世年紀孝』や津田左右吉の『古事記及日本書紀の研究』を読んで、『日本書紀』の紀年にかなり大幅な延長のあることや、『記・紀』の記事には、編者による潤飾や造作の少なくないことは承知していたが、四世紀末以来、日本が朝鮮を侵略し、任那はもちろん百済や新羅を支配していたという正統的解釈は、ほとんどそのまま信じていた」(P13)。
当時を知らないのでどれほどのものかはわからないが、そうした歴史を知らないで今の本を読むことの怖さを覚えた。旧石器の偽造事件も次第に意識されなくなることは考えられる。論文が学界に受け入れられるためには検証に時間がかかる。論文も不正がありうるという前提を置いて読む。谷沢永一が言うように何事も鵜呑みしてはあかんと言うことだ。根拠を明らかにしていない文章は学術として読むに値しない。
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